化審法

日本における「化審法」について、以下にまとめる。(2024年2月時点の情報)

  • 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 = 化審法と呼ぶ。
  • 化審法の目的:人の健康を損なうおそれまたは動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による、環境の汚染を防止すること。(化審法第1条より)
  • 化審法の概要:主に、新規化学物質の事前審査、上市後の化学物質の継続的な管理措置、化学物質の性状等に応じた規制及び措置の3つの部分から構成されている。
  • 化審法の経緯:1973年に制定され、2011年には、従来のスクリーニング評価にリスクベースの評価管理を加え、ストックホルム条約(POPs条約) に対応するため第一種特定化学物質にエッセンシャルユースを盛り込んで大幅改正された。
  • 対象:化学物質およびその製品。
  • 対象となる化学物質について
    • 化審法における「化学物質」とは、元素または化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物のこと。
      元素や、アスベスト等の天然物は該当しない。
    • 放射性物質、毒劇法の特定毒物、覚せい剤取締法、麻薬取締法等、他の法令で規制されるものを除く。
    • 「既存化学物質」以外の化学物質は「新規化学物質」とされる。
    • 既存化学物質は、性状等によって「第一種特定化学物質」、「第二種特定化学物質」、「監視化学物質」、 「優先評価化学物質」、「一般化学物質」に分類される。
  • 対象となる製品について
    • 化審法における「製品」とは、
      1. 固有の商品形状を有するものであって、その使用中に組織や形状が変化しないもの (合成樹脂製什器、板、管、棒、フィルム等)
      2. 必要な小分けがされた状態であり、表示等の最小限の変更により、店頭等で販売されうる状態になっている混合物(顔料入り合成樹脂塗料、家庭用洗剤等)
    • 政令で指定される製品 ⇒ 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令  原文参照

参考情報

化審法における「既存化学物質」の分類

化審法における既存化学物質は以下のように分類される。

物質の区分

難分解性

高蓄積性

人への長期毒性/生態毒性

備考

第一種特定化学物質

あり

あり

あり(生態毒性:高次捕食動物に対して)

監視化学物質

あり

あり

不明(生態毒性:高次捕食動物に対して)

第二種特定化学物質

あり(生態毒性:生活環境動植物に対して)

相当広範な地域の環境に相当量残留/残留見込み

優先評価化学物質

不明(生態毒性:生活環境動植物に対して)

相当程度残留/残留見込み

特定一般化学物質 (※1)

あり(生態毒性:生活環境動植物に対して)

環境排出量少

一般化学物質

有害性低・環境排出量少

  • ※1
    新規化学物質の審査により、新たに著しい毒性が確認されたものについて特定新規化学物質として指定。(公示後は特定一般化学物質)

参考情報

要求される責務

以下の通り、大きく3点に分けられる。

  1. 新規化学物質の届出・申出
    新規化学物質の製造者及び輸入者は、上市前に事前に国による審査または確認を受ける必要があり、必要情報の届出・申出をする。
    詳細はこちらを参照のこと。(経済産業省HP「新規化学物質の届出・申出」)
  2. 製造・輸入量及び用途の事後届出
    既存化学物質のうち、一般化学物質及び優先評価化学物質を年間1t以上、監視化学物質を年間1kg以上
    製造・輸入する事業者は、毎年度の実績等を届け出る。
    届出された有害性情報等を基に国がリスク評価を実施する。
    詳細はこちらを参照のこと。
    (経済産業省HP「一般化学物質、優先評価化学物質及び監視化学物質等の製造数量等の届出」)
  3. 特定化学物質の種類に応じた義務
    • 第一種特定化学物質に指定された化学物質・これらを使用した製品 ⇒ 製造または輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入制限等が規定されている。    
      下表赤字:成形品への影響

対象

製造

使用

輸入

化学物質(意図的使用)

原則禁止(許可制)

原則禁止(エッセンシャルユース以外)

原則禁止(許可制)

製品

禁止 (政令指定製品) (※1)

参考情報

エッセンシャルユースについて

エッセンシャルユースとは:第一種特定化学物質が製品の製造に不可欠であって、環境汚染のおそれがない場合に限って、例外的にその使用を容認(エッセンシャルユース)することがある。
現時点で指定されているエッセンシャルユースは無い。
PFOSを含有する消火器・消火器用消化薬剤・泡消火剤の取り扱いについてはこちらを参照(経済産業省HP)のこと。

化審法と国際条約関係の情報

残留性有機汚染物質に関する「ストックホルム条約(POPs条約)」の対象物質について、附属書改正の通知より1年の猶予をもって化審法第一種化学物質に指定し、条約の義務を履行している。
化審法第一種特定化学物質の動きは POPs条約 基本情報ページを参照のこと。

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