火力発電とは

火力発電の概要

火力発電とは、石炭、天然ガス、石油などの可燃物を燃料とする発電設備です。燃焼によりお湯を沸かした蒸気や高温の燃焼ガスにより、タービンやディーゼルなどの機関から発電機を回転し、電力を発生させます。燃料の量を変えることで発電量を調整します。

一般的な火力発電所のしくみ 一般的な火力発電所のしくみ

火力発電の特長として、石炭、天然ガス、石油などの備蓄燃料により発電するため、天候に影響されずに安定的に電力供給できます。
火力発電は、起動停止時間が短く、負荷変動に対する応答が速いことから、電力需要変動への調整力として重要な役割を果たしています。また同期発電機の慣性力、同期化力を有することから、系統周波数などの系統変動に対しても、電力の安定供給を維持できるレジリエンスに優れます。
これらの特長から、多様な電力需要に合わせて、ベースロード供給、ミドル供給、ピーク供給が可能で、経済的で融通性が良いため、2023年時点で、火力発電は日本の電力需要のおよそ7割を担っています。

国内 発電電力量の推移
出典:資源エネルギー庁 エネルギー白書2024【第214-1-6】よりJEMA作成

カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギー主力電源化への移行が進められています。そのためには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが天候に影響される電力変動を補うことが必要です。
火力発電は、これらの電力変動を補う調整力としても、電力安定供給、エネルギー安全保障の観点で重要な役割があります。

電力需要に対応した発電方法の組合せ
出典:日本原子力文化財団/原子力・エネルギー図面集 「電力需要に対応した電源構成」

また、近年では気候変動への危機から、化石燃料を用いた火力発電は、CO2の大きな排出源としての環境面がクローズアップされており、発電効率の向上によるCO2削減、水素・アンモニアなどの脱炭素燃料との混焼・専焼やCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)利用によるCO2ゼロ・エミッション、さらにはバイオマス燃料利用などにより大気中のCO2を削減するネガティブエミッションにより、カーボンニュートラル実現に向けて技術開発や実証に取り組んでいます。

火力発電 発電効率の向上とCO2削減
出典:2016年6月「次世代火力発電に係る技術ロードマップ技術参考資料集」よりJEMA作成

火力発電の方式

汽力発電

汽力発電とは、蒸気の膨張力を利用した発電方式です。
重油やLNG(液化天然ガス)、石炭などを燃やした熱で高温・高圧の蒸気をつくります。この蒸気を使って蒸気タービンの羽根車を回し、タービンにつないだ発電機を動かし発電します。
汽力発電では、比較的低温域(600℃以下)での熱エネルギーの利用となります。

汽力発電 汽力発電の基本構造

蒸気タービンは外燃機関の一種で、外部で発生させた高温の蒸気をタービン(羽根車)に吹きつけて回転させ、動力や推進力を発生させることのできる機関のことを指します。
蒸気タービンは、同じ機関で蒸気往復機関(ピストンを往復させて回転する力を得る機関)に比べて重量が軽く、大きな出力を得ることができます。
蒸気タービンは、従来型の石炭火力から、コンバインドサイクル、熱供給コージェネレーションなど様々な火力発電の他、地熱発電や原子力発電などにも利用されています。

ガスタービン発電

燃料(灯油、軽油、LNGなど)を燃やした燃焼ガスでタービンを回して発電する方式です。高出力のため、電力需要のピーク時に使われています。
ガスタービンは、「ガスタービンエンジン」とも呼ばれる、内燃機関の一種です。高温の気体の流れによりタービン(羽根車)を回転させることで、動力または推進力を発生させることのできる熱機関のことをいいます。

ガスタービン・ガスエンジンの基本構造 ガスタービン・ガスエンジンの基本構造

発電に用いられるメリットとしては、小型で高出力が得られることが挙げられます。また、他の内燃機関であるディーゼルエンジンと比べると(同出力で比較)「窒素酸化物(NOx)や炭化水素の抑制が行いやすい」「省スペース化に貢献する」事等も発電に使用される理由となっています。
近年、ガスタービンを用いた火力発電所では、コンバインドサイクルが増えてきています。これは、ガスタービンの特徴のひとつでもある排気温度の高さを利用したもので、廃熱ボイラーにて回収された排ガスを利用し高温の蒸気を発生させ、蒸気タービンに送り蒸気タービンでも発電を行います。
コンバインドサイクルはガスタービンを単体で動かすよりも熱効率が良く、世界最高レベルの熱効率60%を超える発電所があります。
また、中小容量クラスのガスタービンは、常用発電、非常用発電、熱供給コージェネレーション、自家発電など幅広い用途に利用されます。

ガスエンジン発電・ディーゼルエンジン発電

シリンダーなどの機関内において、燃料(灯油、軽油、LNGなど)を燃やした燃焼ガスで機関の運動エネルギーから変換し発電する方式です。短時間で始動できる特徴があり、常用発電、非常用発電、熱供給コージェネレーション、自家発電など幅広い用途に使用されます。

出典:川崎重工業ウェブサイト「ガスエンジン」

コンバインドサイクル発電

主にガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式です。最初に圧縮空気の中で燃料を燃やしてガスを発生させ、その圧力でガスタービンを回して発電を行います。ガスタービンを回し終えた排ガスは、まだ十分な余熱があるため、この余熱を使って水を沸騰させ、蒸気タービンによる発電を行います。

一般的なコンバインドサイクル発電所の仕組み 一般的なコンバインドサイクル発電所の仕組み

この発電方法を使うと同じ量の燃料で、通常の火力発電より多くの電力をつくることができます。同じ量の電気をつくるのに、CO2の排出量が少ない優れた発電方法です。
CO2排出量の削減は、地球温暖化防止の観点から世界的な課題になっているため、汽力発電に比べて環境面で有利なコンバインドサイクル発電は、積極的な開発が進められています。
構造は一般的な火力発電よりも複雑ですが、小型の発電機をたくさん組み合わせて大きな電力を得ることができ、発電機の起動・停止も簡単で、電力需要に敏速に対応できるというメリットがあります。
現在導入されている最新鋭のコンバインドサイクル発電については、世界最高水準の60%を超える発電効率を実現しています。

石炭ガス化複合発電(IGCC)/石炭ガス化燃料電池複合発電 (IGFC)

石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)は、石炭をガス化炉でガス化し、さらに、ガスタービン・コンバインドサイクル発電(GTCC)と組み合わせることにより、発電効率と環境性能を飛躍的に向上させた次世代の火力発電システムです。大型IGCCでは従来型石炭焚き火力発電方式と比べ、発電効率を約15%向上させ、CO2の低減も図ることができます。

IGCC=Integrated coal Gasification Combined Cycle

出典:三菱重工業ウェブサイト 「製品 - 石炭ガス化複合発電プラント(IGCC)」

石炭火力において、43%以上の熱効率を達成するIGCCの実証が、中国電力・大崎クールジェン、IGCC勿来(なこそ)など国内の複数の拠点で進行中です。CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)も組合せることで、CO2を大気放出しないシステムを構築しています。更に燃料電池を追設して、ガスタービン、蒸気タービン、燃料電池のトリプル複合発電により効率を向上させた石炭ガス化燃料電池複合発電IGFCの実証が行われています。こうした最新鋭高効率火力の早期の社会実装も、カーボンニュートラル移行期で取り組まれています。
IGFC= Integrated coal Gasification Fuel Cell Combined Cycle

大崎クールジェンプロジェクト概要 大崎クールジェンプロジェクト概要
出典:大崎クールジェン株式会社ウェブサイト

出典:NEDO、ニュース「世界初、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証事業に着手」

火力発電の脱炭素化技術開発

燃料の脱炭素化

石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料に代わり、水素・アンモニアなどの非化石燃料を燃焼させることで、CO2を排出させない方法で、燃料転換により脱炭素化が進められています。
発電設備としては燃焼器の開発が中心で、既設燃焼器を置き換える事で経済的に炭素排出を抑えることができます。
水素・アンモニアを燃料とした混焼実証試験を経て、専焼のガスタービン、ガスエンジン、およびボイラーの開発を進めています。

水素燃料

水素は燃焼時にCO2を排出しないクリーンガスとして利用が進められております。
天然ガスに比べ燃焼性が高いため、逆火の発生及び高NOxが課題となります。この対策として、図に示すような空気と燃料を混合・燃焼することでタービンを駆動させる為の燃焼器の開発が進められています。タービン、圧縮機などの他のガスタービン構成要素については、現在の技術が活用可能です。従い燃焼器を交換するだけで低・脱炭素化を進める事ができること、更にH2純度が高くなくても効率を下げることなく利用できることから、経済的負担も少なく、電源設備のカーボンニュートラル化を進めるに当たり、有望な技術と言えます。
水素燃料においては、小型ガスタービンによる専焼、大型ガスタービンによる20%混焼の実証試験に成功しています。今後、大型ガスタービンにおいてもEUのガス火力基準に適合する30%超の混焼率や専焼を実現すべく技術開発が進められています。

水素ガスタービン燃焼器の開発状況
出典:経済産業省, 第27回水素・燃料電池協議会 資料1
「水素社会実現に向けた社会実装モデルについて」

水素ガスタービン
出典:三菱重工業, HP「水素発電で、サステナブルな未来を実現する。」

アンモニア燃料

アンモニアは既に肥料や化学製品の原料などで工業利用されていることから、同じクリーン燃料である水素よりも製造や貯蔵、運搬などのインフラを新たに整備するハードルは低く、早期普及が予想されます。また、アンモニアは常圧でも-33℃で比較的容易に液化出来る一方で、腐食問題や毒性、水素を取り出すためのエネルギーロスや設備追加の必要性等、水素の輸送手法としては一長一短がありますが、サプライチェーンの観点において、水素輸送手段の一つとしても注目されています。

表 水素キャリア

アンモニア燃料においては、2MW級の小型ガスタービンで専焼技術が確立されています。また、100万kW級の石炭火力発電における20%混焼の実証試験に続き、50%超の混焼率や専焼の実現に向けた取組みが進められており、今後石炭火力におけるアンモニア混焼の拡大が見込まれます。

アンモニアガスタービンシステム
出典:三菱重工業提供

アンモニアガスタービン
出典:三菱重工業, ニュース「世界初となるアンモニア焚き4万KW級ガスタービンシステムの開発に着手」

CO2分離・回収・貯蔵・利用(CCS/CCUS)

二酸化炭素(CO2)を削減する方法として注目されているのが、排出されたCO2を集めて地中に貯留する技術です。さらに、集めたCO2を何かに役立てることができれば一挙両得です。
石油、石炭などの化石燃料をエネルギーとして使う火力発電では、CO2が排出されます。そこで、火力発電のCO2排出量を抑えるため、さまざまな取り組みがなされています。「CCS」「CCUS」はその取り組みの一つです。
化石燃料を使用しながらも、最終的にCO2を大気へ出さないため、既設発電をそのまま使用できますが、CO2分離回収装置を追設し、回収したCO2を貯留や利用で処理する必要があります。
「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。
「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。例えば、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSが既存技術として行われており、全体ではCO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるとして、ビジネスになっています。
また、回収したCO2から燃料、化学品、建材、炭素素材などを製造し、再利用する取り組みがなされています。

CCSの流れ CCSの流れ

ネガティブエミッション(DACCS/BECCS)

ネガティブエミッション技術(NETs)とは、大気中のCO2を回収・吸収し,貯留・固定化することで大気中のCO2除去 (CDR, Carbon Dioxide Removal)に資する技術です。
 NETs = Negative Emission Technologies

火力発電においても、大気中のCO2を減らす技術として、DACとBECCSの利用に取り組んでいます。
「DAC」とは「Direct Air Capture」の略で、大気中のCO2を直接回収する技術の総称です。
さらにCCSにて貯留する技術を組み合わせると「DACCS」(Direct Air Capture with Carbon Storage)と呼びます。
化石燃料をバイオマスなど脱炭素燃料に転換することで、大気中のCO2を減らすことができ、ネガティブエミッションとなります。
「BECCS」とは「BioEnergy with Carbon Capture and Storage」の略で、バイオマス発電とCCSを組み合わせた技術です。
ネガティブエミッションは、火力発電のCO2排出を削減する技術として注目されています。

出典:経済産業省 第1回ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会 資料3よりJEMA作成

JEMAの取組み

火力発電は、電力の調整力、慣性力、同期化力により、様々な電力需給ニーズに応じて、電力の安定供給に貢献しています。更にカーボンニュートラル実現のために、発電効率向上、CO2ゼロ・エミッション、ネガティブエミッションへの取り組みを行っています。
JEMAは、カーボンニュートラル実現に向けた火力発電分野の持続可能な発展のための提言活動を行っています

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