分散型グリッドとは
「分散型グリッド」は、大規模発電所の電力供給に依存せず、地域に設置された分散型電源(再生可能エネルギー、小規模発電所)や蓄電システムなどの分散型エネルギーリソースをIoT技術により地域内で統合的かつ効率的に運用することができる電力系統です。
分散型グリッド構築イメージ
出典:資源エネルギー庁 第7回地域社会における持続的な再エネ導入に関する情報連絡会 資料8
分散型グリッドの概要
分散型グリッド導入の意義
分散型グリッドの導入は、地域のエネルギー利用の効率化(地産地消)を軸に、脱炭素化、エネルギー自給率向上などS+3E(※1)に係わる社会的マクロ課題、エネルギーレジリエンス強化や産業創出などの地域のミクロ課題の解決にも繋がることが期待されています。分散型グリッドの導入意義は、前述のような視点で考えることが重要となり、主な意義を下表に示します。
(※1) S+3E:安全性(Safety)+安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)
<分散型グリッド導入の主な意義>
社会的な意義 |
地域(自治体、事業者(※2)、需要家)の意義 |
---|---|
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|
(※2) 一般送配電事業者、配電事業者、再生可能エネルギー発電事業者等
(※3) DER (Distributed Energy Resources):需要家の受電点以下に接続または系統に接続される
エネルギーリソース(エネルギー生産設備、蓄エネルギー設備等)を総称するもの。
分散型グリッドを導入する地域によって、活用できるエネルギー資源や運用、分散型グリッドを導入する意義も異なってきます。電力系統運用者、エネルギー事業者、自治体及び需要家などの関係者が、分散型グリッド導入の必要性や意義について十分に議論する必要があります。
分散型グリッドの機能
分散型グリッドの機能を以下に示します。
-
平常時、一般送配電事業者の電力系統からの電力供給を受けつつ、エリア内の再生可能エネルギー電力を最大限利用できるよう需給バランスを制御
- 非常時、一般送配電事業者の電力系統から切り離し、エリア内の分散型エネルギーリソースを活用し、エリア全体もしくは一部のエリアへ電力を供給
分散型グリッドの基本構成
分散型グリッドの基本構成は、①エネルギー生産設備、②蓄エネルギー設備、③エネルギー転換設備、④エネルギー供給設備、⑤需要家設備、⑥エネルギーマネジメントシステムとなります。
分散型グリッドの基本構成
分散型グリッドの基本構成におけるそれぞれの役割と主な設備を下表に示します。
分散型グリッドの基本要素
構成 |
各要素の役割 |
主要な設備 |
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①エネルギー生産設備 |
エネルギー(電気、熱等)を作る |
|
②蓄エネルギー設備 |
エネルギーをそのままもしくは転換(電力→熱、電力→水素等)して貯蔵する |
蓄電池、電気自動車、貯湯槽、水素タンク等 |
③エネルギー転換設備 |
エネルギーを転換(電力→熱、ガス→電力・熱、電力→新燃料等)する |
ヒートポンプ給湯器、燃料電池、水電解装置等 |
④エネルギー供給設備 |
エネルギーを供給する |
送配電設備(送電線、配電線、自営線)、変電設備、ガス配管、熱導管等 |
⑤需要家設備 |
生活や社会活動のためにエネルギーを使う |
テレビ、パソコン、照明、空調、冷暖房設備、製造設備等 |
⑥エネルギーマネジメントシステム |
エネルギー需給を監視し、運用を最適化する |
HEMS(※4)、BEMS(※5)、CEMS(※6)等 |
(※4) HEMS(Home Energy Management System):家庭内で使う空調や照明等を制御するエネルギー管理システム
(※5) BEMS(Building Energy Management System):ビル内で使う空調や照明等を制御するエネルギー管理システム
(※6) CEMS(Community Energy Management System):街や地域全体のエネルギーを効率的に管理するためのエネルギー管理システム
分散型グリッドの形式
地域特性に応じた活用モデル
「分散型グリッド」は、地域の需要(住宅地・商業地・工場地帯)、分散型エネルギーリソースの導入等の地域特性により目的が異なってきます。下記に3つのモデルを例示します。
地域特性に応じた分散型グリッドの活用モデル
都市部モデル
都市部では、エリアを限った範囲でのエネルギーの効率的な利用やレジリエンス強化を主目的とし、街区/ビル、工場などエリア限定した範囲での活用が有効と考えられます。また、電力需要の密度やエネルギー生産設備の確保の状況によっては、エリアを拡大できる可能性があります。
都市部は、電力需要が集中し、電力系統が密になります。エネルギー生産設備は設置場所の関係で限られます。また、停電発生時に分散型グリッドを自立運転させるために電力系統から切り離す箇所が多くなり、システム構築や復帰作業が煩雑になる傾向にあります。そのため、都市部では広いエリアでの分散型グリッドの構築は難しくなると考えられています。
郊外モデル
郊外(半島の先端、山間部等、本土の電力系統と接続している島しょを含む)での活用モデルは、需要を賄うエネルギー生産設備を確保しやすいことからエネルギーの地産地消が主目的となります。他方、このような地域では自然災害が生じた場合、電力系統の復旧作業が長期化する恐れがあります。そのため、レジリエンス強化という面でも重要な役割を果たすと考えられています。
郊外では、都市部に比べて電力需要及び電力系統は疎になります。停電発生時に電力系統から切り離す箇所が少なくなると自立運転の発動がしやすくなることに加え、都市部に比べてエネルギー生産設備の確保がしやすいため、郊外では分散型グリッドが実現しやすいと考えられています。
離島モデル(独立系統)
本土の電力系統に接続していない離島においては、本土に比べ発電コストが高くなる傾向にあります。離島における分散グリッドは、島内の分散型エネルギーリソースを効率的に活用し、電力コストの低減とエネルギー自給率を高めることが主目的になります。また、離島では、災害や電力系統の復旧作業中の停電時、分散グリッドにより自立運転の発動がしやすく、電力レジリエンス強化の面でも重要な役割を果たします。このため、比較的分散型グリッドを実現しやすく、小さな離島であれば島全体を分散型グリッド化することも考えられます。
JEMAの取組み
JEMAは、分散型エネルギーリソースの中で以下の設備を供給する業界団体として分散型グリッドの構築に貢献し、技術的側面から社会課題解決を目指していきます。
- 再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱、バイオマス発電)や燃料電池システム、蓄電システム等
- 送変電設備(変圧器、遮断器等)やそれらを制御する系統制御システム
- 需要家設備(エアコン、冷蔵庫等)
分散型グリッドの導入に向けては、分散型エネルギーリソースの価値を創出する制度の構築及びシステムの普及に加え、分散型グリッドの基本要素(※6)を束ねて制御する分散リソース協調・制御プラットフォームの社会実装が急務であり、これら実現に向けて意見を発信していきます。
(※6) ①エネルギー生産設備/②蓄エネルギー設備/③エネルギー転換設備
④エネルギー供給設備/⑤需要家設備/⑥エネルギーマネジメントシステム
分散リソース協調・制御プラットフォームの概要
2050年分散型グリッドの絵姿
JEMAでは、産業構造や社会構造の変革を成長につなげるグリーントランスフォーメーション(GX)の取組みを地域レベルから推進するため、2050年を想定した分散型グリッドの絵姿を策定して公表しました。
2050年分散型グリッドの絵姿
地域を支える電力プラットフォ-ムに関する国内課題解決及び海外展開のための提言
JEMAスマートグリッド委員会では、2020年10月に地域電力系統分野における分散化の推進や蓄電池リソースの活用促進について検討結果を取りまとめました。
この中では、次の観点でJEMAの意見を示しています。
- 送配電設備の持続性
- 柔軟な運用を可能とする設備・保守の標準化
- フレキシビリティの価値が評価される市場整備の推進
- エネルギーリソースを活用したレジリエンス強化