脱炭素化に向けた電機技術

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われわれが社会活動を行う中で排出する温室効果ガスのうち、各種エネルギーの利用に伴うものが大きな割合を占めており、カーボン・ニュートラルを達成するためにはエネルギー起源の温室効果ガス排出を削減する必要があります。
一方で、現代社会は電気などのエネルギー源を使用することを前提に成り立っていると言って過言ではなく、カーボン・ニュートラルに向けた取組みを進める中で、常に安定してエネルギーを使用することができる、エネルギーセキュリティーを確保することが必要です。
エネルギーセキュリティー確保の観点では、エネルギー利用の効率が良い電気エネルギーを安定して供給するシステムを構築することと、世界情勢の変動に影響を受けずエネルギー源を確保するために我が国のエネルギー自給率を向上させることが必要です。
再生可能エネルギーである太陽光発電、風力発電、水力発電、準国産エネルギーである原子力発電、柔軟に発電量を調整できる火力発電などの各種電源、蓄電池などの電力貯蔵システム、電気を必要な場所に効率よく送る送変電システムなど、これらの電機技術をそれぞれの特長に応じて適切に組み合わせることで、エネルギーセキュリティーの確保とカーボン・ニュートラルの達成を両立することが出来ます。
表の中の各項目から、JEMAが持つそれぞれの電機技術の要素と我々が向かうゴールのイメージをご覧ください

注:矢印(→)は、それぞれが向かう先の要素に貢献することを示す。

エネルギーセキュリティー

電力供給安定性

電力を送る方式には、直流送電システムと交流送電システムがありますが、交流送電システムは多数多様な需要家に電力を送ることに優れていることから、日本をはじめ全世界の主要な送配電システムに採用されています。一方で、電力を送る原理の面で、交流送電システムは発電側と需要側の電力のバランスをとることだけではなく、送配電網の中で電圧と周波数を一定の範囲に調整する必要があります。
これまでの電力システムは火力発電、原子力発電および水力発電など、人為的に発電量を制御できる電源が主力であったため、これらの出力を短期的あるいは中長期にわたって調整することで電力システムを安定して運用してきました。
今後、カーボン・ニュートラルの実現に向けては、太陽光および風力発電を主力電源とすることが必要となってきますが、これらの発電量は、天候あるいは風況などの自然条件により左右され、少なくとも増加させる側の人為的な制御は不可能です。このようなエネルギー源を特に変動性再生可能エネルギー(VRE:Variable Renewable Energy)と呼びますが、これらVREへの依存度を高めるには、電力システムを安定化させるための追加的な施策が必要となってきます。
下図は、世界エネルギー機関が2018年に公表した、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って必要となる施策をまとめたものです。横軸に示すVREの比率が高まるに従い、縦軸の各ステージに示す電力システムの施策が必要としています。図中に示すそれぞれの矢印は、各国の2017年時点での実情と2030年時点で予測されるVRE導入状況に対応するものです。この図の作成時点での我が国の2030年時点の導入比率は10%前後と予測されていますが、2020年に策定された第6次エネルギー基本計画では36~38%と設定されており、フェーズ4に相当するVRE前提の電力系統への移行、発電機能の高度化が必要な段階となります。さらに政府が目標とする2050年での再生可能エネルギー比率50~60%では、VREの総発電量が電力需要を上回る時間帯が多く発生するため、他エネルギーの需要を電力に転換する「電化・電動化」を可能な限り推進することで、エネルギーの効率利用を図る必要があります。
また、我が国の梅雨のように比較的長期間にわたり天候不順が続くような気候条件の場合には、長期的にエネルギーを貯蔵するために電力を燃料に転換することも必要になると考えられます。

自然変動再エネの導入拡大とそれに応じた運用上の課題 出典:資源エネルギー庁「系統ワーキンググループ」第20回会合 資料1を加工して作成

電力システムを安定して運用するには、主に以下の観点での施策が必要となります。

需給量のバランス調整

20~30分程度以上先の需要電力量を予測し、それに合わせるように発電機の出力を制御しています。現時点でVREの導入が進んでいる九州地方などでは、例えば右図のように再生可能エネルギーの発電量が総需要量を上回る時間帯が発生しており、柔軟な出力調整が可能な火力による発電量を抑制するとともに、エネルギーを蓄積するための揚水動力として使用することで需給量のバランスを調整しています。

一日の電力需要カーブおよび電源別発電量(イメージ)

周波数調整

VREの発電量、需要電力量の変動などを主要因とした電力需給の予測誤差を補うものとして、数分レベルの時間レンジでの電源の出力を調整するものです。

システム安定性

上で説明した数分レベルより短い時間レンジの電力需給のバランスは、人為的な調整は困難です。ただし、多くの物理現象と同じように電磁気的現象の集合体である電力システムも現状を維持しようとする性質を持っており、規模の大きい火力発電所、水力発電所および原子力発電所の発電機が持つ回転エネルギーを主なエネルギー源として、ごく短期的な需給変動あるいは機器故障などの状態変化に対して電力システムの安定性を維持することが出来ます。これら電力システムが持つ現状を維持しようとする特性を「慣性力」を呼びます。また、これらの発電機は、お互いが同じ周波数に同調して動こうとする「同期化力」と呼ばれる特性も有しています。
現状の電力システムの安定性は、これら大型の発電機が持つ「慣性力」および「同期化力」に大きく依存していますが、再生可能エネルギーの主力と想定されている太陽光発電および風力発電はこれら特性を持たないため、将来的に再生可能エネルギーの発電比率が増大すると、疑似的にこれらの特性を提供するパワーエレクトロニクス機器である疑似慣性力など、補足的なシステムを導入することも必要となります。
また、別の側面として、特に太陽光発電など今後導入が進むと考えられる再生可能エネルギーは小規模かつ分散配置されるものが多く、大規模発電所などの集中電源から需要家への電力供給に対応して構成された現在の電力システムから、電力の流れが大きく変化することが想定されています。このような状態変化に対し安定して電力を送るために、例えば電力システム上の要所において電圧を維持する無効電力補償装置などの機器も必要となってきます。

エネルギー自給率

私たちの社会活動には、電力をはじめとしたエネルギー源が不可欠ですが、現在我が国は石油、天然ガス等を主なエネルギー源を輸入に頼っており、下図が示す通り自国で確保できるエネルギーの割合(エネルギー自給率)は11.3%と非常に低くなっています。一方で、ロシアによるウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ武装勢力の衝突をはじめとした中東情勢の緊迫化などに見られるように、世界情勢は常に変動のリスクを孕んでおり、エネルギー源を過度に輸入に頼ることは安定供給の観点で非常に危険です。
この観点で、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーの比率を高めることは、エネルギー自給率を改善することに寄与し、また準国産エネルギーに位置づけられる原子力発電も積極的に活用することが必要です。ただし、将来的な再生可能エネルギーの主力として期待されている太陽光および風力は日射、風況などの気候条件に左右されるため、エネルギーの安定供給を図るためには、蓄積可能な燃料ベースのエネルギー源を一定量確保することが必要です。また、地震・火山大国である我が国では、広範囲なインフラ破壊を伴う大規模災害の発生に対し十分に備える必要があり、この観点で特定のエネルギー源に依存することは避けなければなりません。
今後、カーボン・ニュートラルの実現に向けた取組みを進める上で、エネルギーセキュリティーの確保は大前提ですが、そのためには国内外を問わず多様なエネルギー源を適切に配分することが重要となります。

世界各国のエネルギー自給率 出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2023年度版」

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