制御盤2030
制御盤2030WGでは、JEMA会員企業の多くが関与している制御盤製造業のバリューチェーン(図1)に着目し、これを最適化するためのデジタル技術活用に向けた方向性(あるべき姿)を示すと共に、ビジネスモデル変革の参考となるDXの先行事例について制御盤製造業界向けDXガイドライン として紹介している。
制御盤製造業界向けDXガイドラインが制御盤製造業者のDX推進の指針となり、サプライヤにおける新しいソリューション(新商品・サービス等)の一助となることを期待する。
図1 制御盤製造業のバリューチェーン (Today)
制御盤の将来像
2016年10月に「制御盤2030WG」を発足し、制御盤製造業の労働生産性向上と高付加価値化について継続的に議論を重ね、2019年11月に発行したホワイトペーパー の中で2030年の制御盤の将来像(図2)について提示した。
図2 制御盤の将来像
DXの壁と推進施策
制御盤製造業界向けDXガイドラインでは、仕様の提示・確認からアフターサービスまでの制御盤製造のバリューチェーンにおいて、DXを進めるための課題の具体例を”DXの壁”、課題を乗り越えるための施策案を”推進施策”としてまとめた。
表1 制御盤製造のバリューチェーンにおけるDXの壁
バリューチェーンの項目 |
DXの壁 |
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仕様の提示・確認 |
表現やフォーマットの違い |
伝達手段 |
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部品及び回路の指定 |
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仕様作成者のこだわり |
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見積もり |
見積もりの標準化・共通化が困難 |
受注 |
商取引をおこなうことの障壁 |
設計・開発 |
設計の属人化 |
機能要求の多様化 |
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設計変更内容が盤発注者へ反映されない |
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設計と製造との連携不足、部品表の妥当性、完成図書の信頼性 |
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機械設計の変更による影響 |
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調達 |
調達作業の煩雑さ |
調達先の選定 |
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製造 |
熟練作業者の技術伝承 |
配線作業 |
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ラインによる組立作業 |
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慣習作業を変化させる難しさ |
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BCP対応のための管理の複雑化 |
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社内検査・顧客立ち合い |
社内検査時の修正 |
顧客の立会い |
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出荷・納入(物流を含む) |
制御盤の輸送の困難さ |
配送の手配 |
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アフターサービス |
ベテランのノウハウへの依存 |
制御盤製造業のバリューチェーンのあるべき姿
DX推進施策に基づき、制御盤製造業のバリューチェーンのあるべき姿を図3に示す。ポイントは以下のとおり。
- 盤発注者と制御盤メーカとはデータベース(又はクラウド)を介して、全工程のデータを共有でき、シームレスな企業連携が可能となる。
- 機器サプライヤが提供する最新の部品データがクラウド経由でライブラリに反映されるようになる。
- 制御盤メーカの設計データがクラウドを通して、盤発注者経由でエンドユーザ(オペレータ)に提供され、製品の保守に活用される。
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バリューチェーンはクローズドループになっており、納入後のデータ(使用状況)は新商品企画に反映される。
また、下請けから脱却し新規顧客を獲得するため、ウェブページやSNSを活用する。 - JEMAなどの工業会は、制御盤メーカと機器サプライヤとの連携強化について委員会活動を通じて支援する。
図3 制御盤製造業のバリューチェーンのあるべき姿 (Tomorrow)