「昆明・モントリオール生物多様性枠組」における2030年ミッションを実現するためのターゲットについて、リスクの側面を中心に影響分析を行いましたが、これら23の個別目標の中には、リスクの側面以外にも以下のような機会の側面も含まれています。
直接的に生物多様性を
向上させる機会
地域および事業所の緑地における生物多様性保全活動は、以下の目標の機会につながります。
■ 目標3:30by30 ~ 企業緑地の「自然共生サイト」認定 ~
30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2030年までに陸域及び海域面積の30%を保全することを意味し、国が指定する保護地域だけでなく、民間による保全活動地も含まれます。日本では、企業がこれまで生物多様性保全活動に取り組んできた緑地が環境省により「自然共生サイト」として認定されることによって、OECMの国際的なデータベースに登録され、30by30目標の貢献につながります。詳細はこちらのサイトをご覧ください。
■ 目標4:種の保全 ~ 企業緑地における生息域内/域外 保全活動 ~
事業所内や地域の保全活動地において、絶滅危惧種などの重要な種の保全を行っている場合には生物多様性を直接的に向上させる「機会」となり得ます。特に絶滅リスクの高い種について、専門家と協力した科学的データに基づく長期的な保全活動は、生息域内の個体数の増加や、野生復帰を目指す取り組み(生息域外保全)を実施している場合に、ネイチャーポジティブへのより高度な貢献につながります。また、ITC技術を活用して野生生物との軋轢を回避する活動なども機会につながります(参考文献*1)。
■ 目標12:都市緑地 ~ 癒し空間とエコロジカルネットワークの形成 ~
都市部の事業所の緑地や親水空間を従業員や地域住民にも開放することにより、より多くの人々の精神的充足や心身の健康、環境意識の向上に寄与することができます。また、都市部の緑地保全は、分断された野生生物が生息・生育する様々な空間(生態系)をつなぐエコロジカルネットワークの形成への貢献が期待できます。
事業を通じた技術・サービスの
提供により生物多様性を
向上させる機会
電機・電子業界ならではの技術やサービスを事業活動として提供することで、バリューチェーンにおける生物多様性を向上させる機会となります。
■ 目標20:能力構築・技術移転 ~ DX技術による貢献 ~
電機・電子業界の強みとしてのDX技術(衛星やドローン、環境DNAによる生物多様性の調査、各種センサーを活用したモニタリング技術、取得したデータの適正管理のためのブロックチェーン技術やAIによる分析技術等)により、スマート農業の展開(参考文献*2)や、食品ロスの最小化(参考文献*3)など、生物多様性に配慮した持続可能な農林水産業に貢献できる可能性があります。また、生物多様性の学術分野に対する技術提供により、新たな知見の獲得による生物多様性の向上に貢献できる可能性があります(参考文献*4)。
■ 目標21:知識へのアクセス ~ データ活用による貢献 ~
生物多様性の向上のために必要とされる知見やデータについて、様々な関係者が容易にアクセスして有効に活用できるように、情報通信分野における技術的発展に取り組むことで、生物多様性の向上に貢献できる可能性があります(参考文献*5)。また、保全活動地でのモニタリング調査結果などを生きもの調査データベースなどに登録することや、保全活動のノウハウを共有することも貢献につながります。
参考文献*1 生物多様性ビジネス貢献プロジェクト
https://www.biodic.go.jp/biodiversity/private_participation/business/kigyou/?tab=target_04
参考文献*2 農林水産省 スマート農業
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/
参考文献*3 新型コロナウイルス感染症対策に伴い発⽣した未利⽤⾷品の販売を促進するビジネス
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/business-18.pdf
参考文献*4 水環境における環境遺伝子計測技術の確立
https://yoshitomi-lab.com/projects/%E6%B0%B4%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%92%B0%E5%A2%83%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E8%A8%88%E6%B8%AC%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%AE%E7%A2%BA%E7%AB%8B-%EF%BC%88%E6%97%A5%E7%AB%8B/
参考文献*5 株式会社シンク・ネイチャー 日本の生物多様性地図化プロジェクト(J-BMP)
https://biodiversity-map.thinknature-japan.com/