GBF 23ターゲットガイダンス

昆明・モントリオール生物多様性枠組 策定の背景

はじめに

2022年12月、モントリオールで開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)にて「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が策定されました。この新枠組は、「未達」との評価で終わった前国際目標「愛知目標」の教訓をいかして発展させたものであり、企業や金融を中心としたビジネス界による参画を力強く求める内容となりました。世界経済フォーラムが2020年に発表した「Nature Risk Rising」(*1)では、世界の総GDPの半分以上に相当する44兆ドルの経済価値の創出が自然資本と生態系サービスに依存しており、現在世界はその喪失によるリスクにさらされていると指摘しています。生態系からのさまざまな恵みを受けている電機・電子業界においても、生物多様性の保全に向けてしっかりと取り組んでいく必要があります。

*1 Nature Risk Rising https://www3.weforum.org/docs/WEF_New_Nature_Economy_Report_2020.pdf

生物多様性条約の発効から
愛知目標の策定まで

■ 生物多様性条約(*2)の発効

生物多様性条約は、正式名称「生物の多様性に関する条約(CBD:Convention on Biological Diversity)」といい、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で署名が開始され、1993年に発効した国際条約です。2023年現在、196ヶ国が加盟しています。条約の目的として、生物多様性の保全、持続可能な利用、遺伝資源から得られる利益の公正・衡平な配分という3つが掲げられています。最高意思決定機関にあたる締約国会議(COP:Conference of the Parties)がおおむね2年に1回開催され、国際共通ルールについて話し合われています。

*2 生物多様性条約 https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/treaty/about_treaty.html

「昆明・モントリオール
生物多様性枠組」の採択

2020年の「GBO5」発表直後、「国連生物多様性サミット」がニューヨークの国連本部で開催されました。各国首脳は、自然回復への道筋をつけることが急務であり、生物多様性条約第15回締約国会議で野心的な「ポスト2020生物多様性枠組」を確保させることが重要との認識を共有しました(参考文献*3)。翌年2021年に英国で開催された「G7サミット」では、「2030年自然協約」が各国首脳により合意され、2030 年までに生物多様性の損失を止めて反転させること、「ポスト2020生物多様性枠組」策定に向け各国が尽力すること、2030 年までに世界の陸地と海洋の30 %を保全・保護するという「30by30」目標を支持すること、人びとと地球の双方にとって利益となるようなネイチャーポジティブを達成すること、などがコミットされました(参考文献*4)。生物多様性保全に向けた機運が高まるなか、いよいよCOP15が開幕しました。コロナ禍の発生により本来の開催予定より大幅に遅れましたが、2021年10月の第一回会合(中国・昆明市)を経て、2022年12月の第二回会合(カナダ・モントリオール)で愛知目標に続く新しい国際目標を含む「昆明・モントリオール生物多様性枠組」 (GBF)が採択されました(*10)。同枠組の策定は「私たちと自然界の関係を再設定する上での最初の一歩」と表現されており(*11)、世界における生物多様性保全に向けた取り組みの新たなステージの幕開けとなりました。