■ Target6 :外来種対策
侵略的外来種の導入率及び定着率を50%以上削減
環境省仮訳:
外来種の導入経路を特定及び管理し、対策優先度の高い侵略的外来種の導入及び定着を防止し、他の既知又は潜在的な侵略的外来種の導入率及び定着率を 2030年までに 50%以上削減するとともに、特に島嶼などの重要度の高い場所における侵略的外来種の根絶又は管理によって、侵略的外来種による生物多様性と生態系サービスへの影響を除去、最小化、低減及び、又は緩和する。
外来種が本来の生息地以外の場所に侵入することで、その地域の生物多様性の損失を招くことがあります。目標6は、こうした侵略的外来種の侵入を未然に防ぐこと、また侵入した場合には定着しないように駆除や管理を行うことを求めています。
電機・電子業界の企業においては、製品ならびに原材料の輸出入や輸送時に、ヒアリなどの昆虫や植物の種子などの侵略的外来種が意図しないかたちで侵入することがないように、製品梱包やコンテナ、パレット材などへの侵入防止対策を行うことが重要となります。また、事業所や社有地の緑地では、侵略的外来種を排除・管理するとともに、在来種を採用し地域の生態系を守ることが重要です。
■ Target7 :汚染防止・削減
環境中に流出する過剰な栄養素の半減、農薬及び有害性の高い化学物質による
全体的なリスクの半減、プラスチック汚染の防止·削減
環境省仮訳:
(a)より効率的な栄養素の循環・利用等により環境中に流出する過剰な栄養素を少なくとも半減すること、(b)科学に基づき、食料安全保障や生活を考慮しつつ、病害虫・雑草の総合防除などにより農薬及び有害性の高い化学物質による全体的なリスクを少なくとも半減すること、(c)プラスチック汚染を防ぎ、削減し、廃絶に向けて作業すること等により、あらゆる汚染源からの汚染のリスクと悪影響を 2030 年までに、累積的効果を考慮しつつ、生物多様性と生態系の機能及びサービスに有害でない水準まで削減する。
目標7は、土壌や海洋の富栄養化や、有害な化学物質の使用やプラスチック廃棄物による環境汚染に対処し、生物多様性および生態系サービスに有害でない水準まで削減することを求めています。
電機・電子業界の企業においては、有害性の高い化学物質の使用に伴うリスクの削減に向けて、EUを始めとして世界的に規制(RoHS指令、REACH規則、POPs条約等)が強化される方向であり、こうした規制への対応が必要となります。また、事業所からの排水や排気を通じた環境中への化学物質の排出が、生物多様性に負の影響を与えないよう管理することが重要です。さらに海洋プラスチック汚染対策として、包装材・梱包材などの使い捨てプラスチックの使用の削減や、環境負荷の低い素材への代替など、事業活動における取り組みが求められています。
■ Target9 :野生種の持続可能な利用
野生種の管理と利用を持続可能なものとし、
人々に社会的、経済的、環境的な恩恵をもたらす
環境省仮訳:
生物多様性を向上させる持続可能な生物多様性に基づく活動、製品及びサービスと、先住民及び地域社会による慣習的な持続可能な利用の保護と奨励等を通じて、野生種の管理及び利用が持続可能であることを確保することによって、人々、特に脆弱な状況にある人々及び 生物多様性に最も依存している人々に社会的、経済的及び環境的な恩恵をもたらす。
目標9は、主に供給サービスに属する自然の恵みを、それに最も依存する人々から奪わず、むしろ彼らに対して恵みがもたらされるような対応を求めています。
電機・電子業界の企業においては、事業活動における水、木材や紙、鉱物などの自然資源の利用や調達の際に、その地域の自然環境および、先住民などの生活を脅かすことがないよう、配慮が必要です。たとえば、地域住民や先住民などの同意を得ずに伐採された木材や、自然破壊を伴う採掘による鉱物の調達については、関連する地域で暮らす先住民などの生活を脅かすリスクがあります。原材料調達においては、合法性の確認だけでなく、特に脆弱な状況にある人々や生物多様性に最も依存している人々が生態系サービスの恩恵を受ける権利を損なうことのないように、持続可能な調達への取り組みが求められます。
■ Target 11 :自然の調整機能の活用
自然を活用した解決策/生態系を活用したアプローチを通じた、
自然の寄与(NCP)の回復、維持、強化
環境省仮訳:
すべての人々と自然の恩恵のために、自然を活用した解決策及び/又は生態系を活用したアプローチを通じて、大気、水及び気候の調節、土壌の健全性、花粉媒介、疾患リスクの低減並びに自然災害からの保護などの生態系の機能及びサービスを含む自然の寄与を回復、維持及び強化する。
近年、異常気象に伴う自然災害や、水不足による操業停止などが発生しており、企業はこうしたリスクへの対応が必要となっています。電機・電子業界の企業においても、こうしたリスクへの対応として地下水涵養の実施や、大気質の調整や減災のための周辺地域での植林や森林保全など、生態系サービスの維持・回復を目的とした対応が必要となります。こうした取り組みは、NbS(自然に根ざした社会課題の解決)として、重要視されています。特に、水リスクは事業の継続性においても年々重要度が高まっており、その対応と情報開示が求められています。
■ Target 14 :生物多様性の主流化
生物多様性の多様な価値を、政策·方針、規制、計画、開発プロセス、
貧困撲滅戦略、戦略的環境アセスメント、環境インパクトアセスメント及び
必要に応じ国民勘定に統合することを確保
環境省仮訳:
すべての関連する公的な活動及び民間の活動、財政及び資金フローをこの枠組のゴール及びターゲットに徐々に整合させつつ、生物多様性とその多様な価値が、政府内及び政府間のあらゆるレベルにおいて、並びに、特に生物多様性に顕著な影響を与えるセクターを含むすべてのセクターにまたがって、政策・方針、規制、計画及び開発プロセス、貧困撲滅戦略、戦略的環境アセスメント、環境インパクトアセスメント並びに必要に応じて国民勘定に統合されることを確保する。
目標14は、生物多様性の多様な価値を、政策・方針、規制、計画、開発プロセス、貧困撲滅戦略、アセスメント及び必要に応じ国民勘定に統合することを目指しています。つまり、ネイチャーポジティブ達成に向けて、様々な政策や規制、開発プロセスなどの枠組みに生物多様性の価値を組み込むことによって、生物多様性の主流化を推進する目標になります。国や自治体が主導する規制や施策も生物多様性の価値を組み込んだものになっていくことが予測され、企業としてはこうした動きを注視していく必要があります。また、企業の様々な計画や方針、開発プロセスなどにおいても生物多様性の価値を踏まえたかたちで実施していくことが重要となります。
■ Target 22 :女性、若者及び先住民の参画確保
先住民及び地域社会、女性及び女児、こども及び若者、障害者の
生物多様性に関連する意思決定への参画を確保
環境省仮訳:
女性及び女児、こども及び若者、並びに障害者と同様に、先住民及び地域社会の文化並びに土地、領域、資源及び伝統的知識に対する権利を尊重した上で先住民及び地域社会による、生物多様性に関連する意思決定への完全で、衡平で、包摂的で、効果的かつジェンダーに対応した代表性及び参画、並びに司法及び生物関連情報へのアクセスを確保するとともに、環境人権擁護者の十分な保護を確保する。
GBFでは先住民の権利を尊重することが強調されており、また“この枠組の実施の成功は、ジェンダー平等と女性と女児のエンパワーメントの確保及び不平等の低減に基づく”(GBF セクション C.「枠組の実施についての考慮事項」/ジェンダー 15項)とされています。目標22では、女性、こども及び若者、障害者、先住民及び地域社会などの様々な人々が、生物多様性に関連する意思決定に参画することを求めており、その範囲は、決定過程への参加に加え、情報へのアクセス、司法へのアクセスと幅広いものです。
企業は、サプライチェーン上の一連の事業活動において環境・社会・ガバナンスへの配慮が必要であり、特に人権・環境に対するデューディリジェンス(事業活動における人権や環境への悪影響(リスク)を特定し、それに対処・予防・是正する継続的な取り組み)が必要となります。
電機・電子業界の企業においても、生物多様性の保全活動計画の意志決定において、地域住民や先住民、女性や若者などの参画やその権利を尊重する必要があります。