EU REACH規則 基本情報
REACH規則
EUにおける化学物質の登録・評価・認可・制限の制度である「REACH規則」について、以下にまとめる。
(2023年5月時点の情報)
■ REACH=Registation(登録)、Evaluation(評価)、Authorisation(認可) of Chemicals(化学物質)の頭文字をとったもの。
■ REACH規制の目的:人の健康及び環境の高レベルの保護、EU域内の市場における物質の自由な流通の確保、
EU域内の化学産業界の競争力と革新の強化 (REACH規則 第1章第1条より)。
■ REACH規制の概要:欧州連合(EU)における化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規則。
■ REACH規則制定の経緯:1992年「アジェンダ21 」、2002年「ヨハネスブルグ実施計画 」、
2006年「SAICM 」等、化学物質を適切に管理するための国際的枠組み作りの進展を背景とし、2007年発効した。
■ 要求される責務:EU域内の国で生産活動を行っている事業者、
およびEU域外の国から生産物の輸入を行っている事業者について、
「登録の義務」、「届出/認可申請の義務」、「使用制限の義務」、「情報伝達の義務」がある。
■ 適用範囲:
(1)EU域内の国で製造される全ての製造物に含まれる物質
(2)EU域内の国に輸入される全ての製造物に含まれる物質
<補足>部品・素材等を日本国内で製造し、完成品として日本からEUへ輸出される場合も、
REACH規則に対応が必要であることから、日本の事業者にも影響がある。
■ 対象と定義:REACH規則で対象となるのは、「物質そのもの」、「調剤中の物質」、「成形品中の物質」
分類 | 定義 |
---|---|
物質 (substance) | 化学元素及び何らかの製造プロセスによって得られる化合物。 添加物・不純物を含むが分離できる溶媒は除く。 |
調剤/混合物 (mixture) | 2以上の物質からなる混合物/溶液。 |
成形品 (article) | 形状・表面またはデザインが、その化学組成よりも大きく機能を決定する物体。 |
要求される責務
EU域内の国で生産活動を行っている事業者、およびEU域外の国から生産物の輸入を行っている事業者について、「登録の義務」、「届出/認可申請の義務」、「使用制限の義務」、「情報伝達の義務」がある。
項目 | 詳細 |
---|---|
登録の義務 | 年間1トン以上製造/輸入する場合、一部例外を除き、欧州化学品庁※1 (ECHA)への登録が必要。 |
認可申請の義務 | 認可対象物質※2については、年間1トン以下であってもECHAへ認可の申請が必要。 |
使用制限の義務 | 制限対象物質※3については、指定された条件内においてのみ製造、輸入あるいは使用可能。 |
情報伝達の義務 | 認可対象候補物質※4(SVHC)について、安全性データシート※5(SDS)等を川下ユーザーに提供する。 |
【補足】
以下に該当する場合は、年間1トン未満でも CLP規則 ((EC)No1272/2008) による分類の届出の義務がある。
・REACH規則で登録対象外でも(年間1トン未満)、危険有害性があると分類された物質
・CLP規則 ((EC)No1272/2008) または1999/45/EC(危険調剤指令)上での危険有害性のある物質が
濃度限界値以上含有している混合物
(年間1トン未満でも届出必要。ただし混合物全体として危険有害性に分類されない場合不要)
※1 欧州化学品庁:ECHA (European Chemicals Agency)
※2 認可対象物質 (ECHA HP) :REACH規則 附属書 XIVに記載されている。
※3 制限対象物質 (ECHA HP) :REACH規則 附属書 XVIIに記載されている。
※4 認可対象候補物質 (ECHA HP) :SVHC (substances of very high concern) = 高懸念物質とも呼ばれる。
※5 安全データシートとは (厚生労働省 職場のあんぜんサイト)
SDS作成のガイダンス(ECHA HP)
項目 | 詳細 |
---|---|
登録の義務 | 成形品中から意図的に放出され、かつ、その物質が年間1トン以上の場合、欧州化学品庁(ECHA)への登録が必要。 |
届出の義務 | 成形品中の認可対象候補物質(SVHC)が年間1トン以上または、重量比0.1%を超える濃度の場合、ECHAへ届出が必要。 |
使用制限の義務 | 制限対象物質については、指定された条件内においてのみ製造、輸入あるいは使用可能。 |
情報伝達の義務 | 認可対象候補物質(SVHC)を重量比0.1%を超えて含有する成形品について、 ①川下ユーザーに対して、安全な使用を認めるのに十分な情報 ②消費者に対して、要求があった場合、安全な使用を認めるのに十分な情報 を伝達する。(②は要求より45日以内) |
【情報伝達の義務に関する補足】
■ ①、②どちらの場合でも、SVHCリスト公開時点で、その物質に関しては即日義務が発生するため、
公開前にSVHCの情報を調査する必要がある。
・SVHCとして検討されているが未提案の物質 (ECHA HP)
・SVHCとしての提案に対する意見募集中/意見募集終了した物質 (ECHA HP)
・SVHCリスト (ECHA HP)
■ 2021年1月5日~ SCIPデータベースに登録が必要になった。
SCIPデータベースについて
ECHA SCIP データベース トップページ
ECHA SCIP データベース
2021年1月5日より、SVHCを重量比0.1%以上含有する成形品に関する情報を、SCIPデータベースに登録することが義務化された。以下に概要をまとめる。
■ SCIP = Substances of Concern In articles as such or in complex objects (Products)
■ SCIPとは?:ECHAが策定した、SVHC含有情報を登録するデータベース。
■ SCIPの目的:
製品や材料の調達から廃棄段階までのライフサイクル全体を通じて、SVHCの利用を最終的に減少させること。
■ SCIPを設けた背景:
SVHC情報はREACH規則第33条より、成形品の川下ユーザー・消費者に伝達されるが、廃棄物処理業者には
伝達されない。
⇒ 廃棄された成形品のSVHCがリユース・リサイクルされた際に、部品や素材等に含まれるリスクがある。
このため「廃棄物枠組み指令 (WFD:Waste Framework Directive) 」 に基づいて策定された。
■ 何をしなくてはいけない?:
SVHCを重量比0.1%以上含有する成形品に関する情報を、データベースに登録する義務がある。
2021年1月5日より開始
■ 対象:
・EU域内の国で製造される、認可対象物質候補リストにあるSVHCを重量比0.1%以上含有する成形品。
・EU域内の国に輸入される、認可対象物質候補リストにあるSVHCを重量比0.1%以上含有する成形品。
■ 登録方法:
IUCLID6からの登録が主流(IUCLID=ECHAが有害化学物質の管理データベース用に公開している無料ソフトウェア)
IUCLID6 トップページ
IUCLID6 マニュアル
■ ガイドライン類:
ECHA Webinarsページ SCIPデータベースやIUCLIDの動画が載っている。
SCIPデータベースの詳細情報要件(日本語):環境省HP 仮訳
chemSHERPA 製品に含有される化学物質情報を、サプライチェーン全体で適正に運用するため、経済産業省主導で
2015年10月にリリースされたデータ作成支援ツール。SCIPデータベース登録のガイドラインもある。
参考HPまとめ
■ REACH規則本文 掲載サイト
・英語(ECHA HP)
・日本語(環境省 HP)
■ REACH規則の対象物質を知るためのサイト (ECHA HP)
・SVHCとして検討されているが未提案の物質
・SVHCとしての提案に対する意見募集中/意見募集終了した物質
・SVHCリスト
・認可対象物質リスト :REACH規則 附属書 XIVに記載されている。
・制限対象物質 :REACH規則 附属書 XVIIに記載されている。
■ SCIPデータベース関係
・ECHA SCIP データベース トップページ
・SCIP データベース
・SCIP情報の登録
IUCLID6 トップページ IUCLID6 マニュアル
■ REACH規則 ガイダンス・ガイドライン類サイト
・ECHAから出されているガイダンス
成形品について:Guidance on requirements for substances in articlesにガイダンスがある。
・電機・電子4団体 REACHに関するガイダンス・ノート