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様々な再生可能エネルギー
再生可能エネルギーには、太陽光発電、風力発電の他にも、バイオマス発電や地熱発電、中小水力発電があります。また、巨大なポテンシャルがあり、将来的な市場の広がりが期待される、太陽熱発電や海洋エネルギーを利用した海洋温度差発電、波力発電・潮力発電などの発電方式もあります。
バイオマス発電
「バイオ(bio)」=「生物」と「マス(mass)」=「大量」からの造語である「バイオマス」とは、太陽エネルギーによって育まれた様々な生物体に蓄積されている、有機物資源を表す言葉です。バイオマスは、エネルギー源として、また、化学原料などとして利用することができますが、化石資源とは異なり、再生可能な資源と言われています。
これは、最終的に燃焼などによって大気中に排出されるCO2が、もともと大気からの光合成によって動植物の体内に固定化されたものであって、同時に植物が成長することによってまたCO2を吸収することから、全体で見ると、地球温暖化の原因である大気中のCO2の増減に影響を与えない性質であるためです。バイオマスが持っているこのような性質を、「カーボンニュートラル」と呼んでいます。
バイオマスからは、分解、発酵、燃焼などの様々な転換手段によって、電気、熱、燃料などの利用形態を持った種々のエネルギーを作り出すことが可能です。 また、バイオマス発電設備は再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象設備となりますが、バイオマス発電に適用される買取価格は費用構造が類似しているグループに区分されています。
バイオマス発電(木質・燃焼) |
バイオマス発電(蓄ふん・メタン発酵) |
出典: 資源エネルギー庁ウェブサイト
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/biomass/index.html
地熱発電
地熱発電は、地中の貯留槽に蓄えられた熱エネルギーを利用して発電を行うもので、掘削した坑井から噴出する熱水から分離した水蒸気で蒸気タービンを回して発電します。これに対して、バイナリー発電と呼ばれる方式の地熱発電では、大気圧における沸点が100℃より低い液体(アンモニアやペンタンなど)を媒体に用いることで、従来方式では利用できなかった中高温の熱水(100~150℃)で媒体を沸騰させてタービンを回します。従来方式の熱水から水蒸気を分離して発電した後の熱水をバイナリー発電でカスケードに活用する方法もあります。
なお、地熱発電設備は再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象設備となります。
地熱発電(フラッシュ発電) |
地熱発電(バイナリー発電) |
中小水力発電
水力発電は水のエネルギーを水車により機械エネルギーに変換し、さらに発電機により電気エネルギーに変化する発電システムです。水力発電は100年以上の歴史があり、かつては、大規模なダムや長大な導水路・水圧鉄管路などを有する水力発電が主流でしたが、近年ではダムの放流水および農業用水路や上下水道・工業用水などの未利用落差を利用した水力発電が増加しています。
水力発電は、再生可能エネルギーの中では稼働率が高く、耐用年数も約40年と長いため、同規模の発電設備でより多くの発電電力が得られることが特長です。
一方、水力発電は計画、調査、許認可手続きおよび建設までに長時間を要します。早期の発電所開発のために、特に河川法、自然公園法および森林法などの許認可について、今後、より一層の見直しが望まれます。
出力30,000kW未満の水力発電設備は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の対象設備となります。
今後、この制度を利用して様々な事業者による水力発電事業への参入が期待されます。
太陽熱発電
太陽熱発電は太陽光をレンズや反射鏡を用いた太陽炉で集光し、そのエネルギーを汽力発電(水蒸気でタービン発電機を回し電力へ変換する発電)の熱源として利用する発電方法です。太陽光がエネルギー源のため枯渇のおそれがない再生可能エネルギーで、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出せず、燃料費が不要であるため運転にかかる費用を低く抑えられ、燃料費高騰等によるコスト上昇のリスクも少ない発電方式といえます。
太陽熱発電のメリットは、蓄熱※による24時間発電が可能なこと、火力発電との組み合わせが可能なこと、太陽光発電に比べエネルギー変換効率が高い(太陽光発電15%~22%:太陽熱発電20%~40%)ことが挙げられます。
デメリットとしては、昼間が曇天・雨天の場合は効率が悪いこと、夏至・冬至の昼間の差が大きい高緯度地域には向かないこと、建設にかかる期間が長くコストが高いことが挙げられます。また、発電に寄与する太陽エネルギーは直達光のみで、集光には追尾が不可欠なこと、平坦な土地が必要なことなどもあります。
※昼間のうちに太陽熱によって蓄熱材(溶融塩)を溶かして熱を蓄えておき、夜は蓄熱材が固体に戻るときの潜熱
(蓄熱材が解けた状態から固体になる時にでる熱)などによって蒸気を発生させ発電すること。
太陽熱発電は、集光・集熱技術により、主に以下の3つに大別されます。
- トラフ型(大規模向け:~500MW)
曲面鏡を用いて、鏡の前に設置されたパイプに太陽光を集中させ、パイプ内を流れる液体(オイルなど)を加熱し、その熱で発電する発電方式。建設が比較的容易で建設コストも低く、ベース電源として期待されています。
太陽熱発電システム(トラフ型) |
- タワー型(中規模向け:~100MW)
ヘリオスタッドという平面鏡を用いて、中央部に設置されたタワーにある集熱器に太陽光を集中させることで集光し、その熱で発電する発電方式。集光するために太陽の追尾が必要であり建設コストが高いものの、ミドル電源からベース電源として期待されています。
太陽熱発電システム(タワー型) |
- ディッシュ型(小規模向け:~100kW)
放物曲面状の鏡を用いて、鏡の前に設置されたスターリングエンジンなどに太陽光を集中させ、発電する発電方式。単体で機能するため導入コストは高いものの、グリッド接続ができない地域での活用が期待されています。
太陽熱発電システム(ディッシュ型) |
海洋エネルギー発電
波力発電
波力発電とは、海洋エネルギーを利用する発電方式であり、特に波力エネルギーを利用する発電を指します。
発電方式としては、振動水柱型(装置内に空気室を設け、海面上下動により生じる空気の振動流を用いて空気タービンを回転させて発電する)、可動物体型(波のエネルギーを振り子エネルギーに変換したり、浮遊構造物の浮き沈み運動に変換したりして発電する)、越波型(波を貯水池等に越波させて貯留し、水面と海面の落差を利用して水車を回して発電する)など、多数の方式が考案されています。波力発電は、未利用エネルギーである波力エネルギーを有効活用する方法として期待されており、現在、発電効率の向上などによる低コスト化、保守管理の高度化による信頼性向上、海洋環境への対応などに関する研究開発が進められています。
波力発電システム(振動水柱型) |
海洋温度差発電
海洋温度差発電は、海洋の表層部の温海水と深層部(600~1000m)の冷海水との温度差(約20~25℃)の熱エネルギーを火力発電プラントと同じような原理を使って、電気エネルギーに変換するシステムです。
発電方式としては、直接海水を蒸発させるオープンサイクル方式と、作動流体にアンモニアを用いるクローズドサイクル方式があります。
クローズドサイクル方式は、次の5つの機器で構成されています。構成は、(1)表層部の温海水の熱を利用してアンモニアを蒸発させるための蒸発器、(2)蒸発した蒸気の熱エネルギーを回転エネルギーに変換するタービン、(3)タービンの回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機、(4)タービンを出た蒸気を深層水の冷海水で凝縮させるための凝縮器、(5)液体に戻ったアンモニアを再び蒸発器に送るためのポンプです。
また、海洋温度差発電は、発電だけではなく、海洋深層水として、ミネラル水製造、リチウム回収、地域冷熱利用、水産養殖等への利用が考えられています。海水淡水化、水素製造にも利用可能であり、多目的な利用が期待されています。
海洋温度差発電(クローズドサイクル)概念図 |
海流・潮流・潮汐流発電
海流・潮流・潮汐流発電は、海水の運動エネルギーを一般的には水車により機械エネルギーに変換し、さらに発電機を介して電気エネルギーに変換する発電方式です。
海流・潮流発電に用いる水車は、風車と同様に回転軸の方向によって水平軸型(プロペラ式が代表)および垂直軸型(サボニウス式およびダリウス式が代表)に分けられます。また、回転ではなく振動により機械的エネルギーに変換する振動水中翼型を用いる方式もあります。
潮汐流発電は、潮汐に伴う潮位差を利用して水車を回し発電する方式です。水力発電を応用した古くから実用化されている技術であり、代表的なフランスのランス発電所は1967年から運転しています。
黒潮のような海流を利用する海流発電、潮の干満を活用する潮流発電及び潮汐流発電とも、周期的な海水の流れを活用するため、予測可能な安定した再生エネルギーとして期待されています。一方、海流・潮流・潮汐流発電の課題は、発電効率の向上およびイニシャルコストの削減、漁業との共生などです。また、海流発電の適地は陸地から離れており水深が深いため実用化には技術的な課題もあり、潮汐流発電は海岸の入り江や河口の一部を締め切るため水質や生物に与える環境への影響を評価する必要があります。
潮汐力発電システム例 |
太陽熱利用
太陽の熱エネルギーを集熱器で集め、蓄熱槽に蓄えて給湯や暖房に利用するシステムで、太陽熱温水器とソーラーシステムの2つのタイプがあります。新エネルギーの中でも、比較的低価格であり、操作が容易でメンテナンスも殆ど不要であるという特長があります。
太陽熱温水器
集熱器と蓄熱槽(貯湯槽)が一体になっており、家の屋根などに設置して主にお風呂や給湯の目的で使用されます。構造が簡単で低価格であるため従来から広く普及しています。暖められた水は対流により自然循環します。
ソーラーシステム
屋根上の集熱器と地上の蓄熱槽に分離されており、ポンプを使って強制的に循環させることで集熱器から蓄熱槽に熱を送ります。直接蓄熱槽の水を循環させたり、不凍液などを循環させて蓄熱槽内の熱交換器で水を温める水式ソーラーシステムと、集熱器で暖められた空気を送風機で床下の蓄熱槽(コンクリート)に送る空気式ソーラーシステムがあります。ソーラーシステムは、給湯の他、床暖房や吸収式冷凍機を使った冷房など用途が広く、規模が大きいものは福祉施設や学校などにも導入されています。
温度差エネルギー
季節や時間による水温の変化が小さい河川水、海水、地下水や、住宅などの生活排水、工場や変電所の排熱などと外気との温度差を利用し、ヒートポンプ※を用いて、冷暖房や給湯などを行ないます。対象となる熱源は直接利用するほどの高温でなくても、外気との温度差があれば、ヒートポンプで熱エネルギーを「汲み上げる」ことで利用できます。熱源の採取地とエネルギー需要地が近いほど、熱損失や輸送コストの面で有利であり、冷暖房などの地域供給や、温室栽培などの地場産業、寒冷地での融雪用などに利用されています。
※ヒートポンプ
熱媒体の圧縮、膨張と熱交換を繰り返すことで、温度の低いものから高いものへ熱を移動させる装置で、冷蔵庫やエアコンなどにも利用されています。
雪氷熱利用
冬季に降り積もった雪や氷を貯蔵・保存し、夏季に冷熱エネルギーとして利用して建物の冷房や農作物などの冷蔵に使用します。断熱材で覆われた貯蔵庫に雪や氷を蓄え、自然対流による冷熱流で庫内の温度を低く保ち、生鮮食品を貯蔵するものや、空気や水を循環させて大規模な低温貯蔵施設や公共施設等の冷房に活用するものがあります。また、水を凍結、貯蔵するアイスシェルターや、熱伝導性のパイプで地中の熱を外気に放出することで土壌を人工的に凍らせる人工凍土といった方式も利用されています。
雪氷熱利用は、設備導入に費用を要しますが、ランニングコストが少なく、騒音や排熱、排気などの問題も小さいという特長があります。また、雪の冷気は、適度な湿度を保っているため、特に農産物などの生鮮食料品の保存に適しています。