スマートグリッド導入の背景・目的
背景
米国では送配電網への設備投資が適切に行われなかったことによる設備の老朽化により、電力供給信頼度が低下してしまいました。これを主な背景として、エネルギー省より次世代電力系統のビジョンを示した「Grid 2030」が2003年に発表されました。この報告書に今日のスマートグリッドの概念に通ずる事項が初めて記載されています。さらに2007年に発表されたエネルギー自立・安全保障法により、スマートグリッド分野の技術実証予算措置が行われるとともに、標準化活動の推進が大きく実現することになりました。
また欧州においては、各国間の連系線が複雑なメッシュ状となっていることに加え、風力発電を中心とする再生可能エネルギーの大量導入目標により系統の安定運用に課題が現れたこと等を背景に、需給バランスを監視・制御する情報通信技術(ICT)を活用した系統運用が進められることになりました。
目的
世界各地域でのスマートグリッドの種類およびその目的は、大きく4つに分類することができます(表1)。
- 1つ目は「供給信頼度強化型」であり、先に述べた米国の例がこれに該当します。
- 2つ目は「再生可能エネルギー大量導入型」であり、先の欧州の例に加え、太陽光発電の大量導入目標(2020年に2,800万kW:2005年比で約20倍の導入量)を掲げた日本もこれに該当します。
- 3つ目は「急成長需要充足型」であり、今後も電力需要の急成長が予測される中国、インドやブラジルなどにおける、新たな電源や送配電網の構築および強化を軸としたものです。
- 4つ目は「ゼロベース都市開発型」であり、その名の通りゼロから低炭素型を目指した新たな都市の建設を進めていくタイプです。例えば、中国の「天津エコシティ」等が該当します。
種類 | 目的 | 該当地域 |
---|---|---|
(1)供給信頼度強化型 |
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米国 |
(2)再生可能エネルギー 大量導入型 |
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日本 欧州 |
(3)急成長需要充足型 |
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インド 中国 ブラジル |
(4)ゼロベース都市開発型 |
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ポルトガル 中国(沿岸部) シンガポール |
出典:アクセンチュア(株)の資料を元に作成