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流通・取引慣行ガイドライン改正に対する要望と提言

2014.12.10

※本文書のPDF版はこちら: 553KB

1.はじめに

「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(流通・取引慣行ガイドライン、以下「ガイドライン」という)の改正をめぐって、一般社団法人 電子情報技術産業協会、一般社団法人 日本電機工業会及び一般社団法人 日本冷凍空調工業会の三団体は、昨年10月に内閣府 規制改革推進室に対して改正着手に関する要望を、本年2月には、規制改革会議 創業・IT等WGにおいて具体的な改正要望事項を提言してきたところ、本年6月の規制改革会議の答申において、垂直的制限行為に対する事業者の予見可能性を高める観点から、「価格が維持されるおそれ」等の垂直的制限行為に係る適法・合法の判断基準を明確にするためのガイドライン改正を本年度内に完了することが決定された。この答申内容に沿ってガイドラインが改正されれば、流通事業者とメーカーが協力して適正な商品価値をお客様に提供するための新たなマーケティング施策 を導入することが容易になると考えられ、これら新マーケティング施策が消費者メリットに大いに資することが期待される。新ガイドラインが、消費者・流通事業者・メーカーの全てにとって、より効果的なメリットを享受できる実効性のあるものにすべく、改正における具体的な論点とその方向性について提言するものである。


具体的な提言に入る前に、ガイドライン改正の前提を再確認する。現在のマーケティングにおいて最も重要なのは、消費者が求める多様な価値を提供することである。すなわち、消費者利益に資するイノベーションが重要であるため、メーカーは単なる商品供給から「ことづくり」提供への転換を図っている。価格メリット以外の「エコ」「性能・機能」「安全・安心」「特別な感動体験」「贅沢感・高級感」などといった消費者が求める価値を、メーカーと流通が一体となって提供していくことが必須の状況である。一方、メーカーは、(1)商品価値の向上に努めても過度な価格競争を強いられて商品価値を維持できない、(2)販売手法の自由度が低く、商品特性に応じたチャネル選択に実効性を確保できない、(3)販売後の顧客データ・流通経路の追跡ができず、マーケティング戦略の構築や品質・サービス対応が十分にできない、といった課題に直面しており、消費者の期待に応えられているとは言い難いのが現状である。これは、とりもなおさず、現行ガイドラインの「価格維持のおそれ」についての基準が曖昧であり、価格にインパクトのあるマーケティング手法には常に独禁法リスクがつきまとうため、価格に影響があると判断されかねない施策は、控えざるを得ないことが最大の原因になっていると言わざるを得ない。このような現状を踏まえ、新ガイドラインは、「顧客満足の更なる向上」と「消費者・流通・メーカーのwin-win-win」を可能にするものでなければならず、この視点に立ってガイドライン改正が進められることを強く要望する。

2.要望と提言

まず、我々が本年2月に行った規制改革会議への要望概要と規制改革会議答申について概観する。




我々が要望した上記の7項目について、「表示価格への関与」以外の要望事項については、何らかの手当てがなされるものと受けとめている。特に、「非価格制限行為」に関しては、事業者の予見可能性が高まる観点から明確な基準の設定等の手当てがなされることが強く望まれる。以下、規制改革会議の答申に沿ってガイドライン改正の論点を5項目に整理し、それぞれの論点に対して我々が期待する改正の方向性を述べる。


論点1.流通調査が合法であることの明確化


現在、公正取引委員会は、現行のガイドラインを踏まえ、ホームページにおいて以下のQ&Aを公表している。

Q35 メーカーが実際の流通価格や販売先などを調査することは,独占禁止法違反となりますか。また,流通取引慣行ガイドラインでは,そのような調査について,どのように記載していますか。

A.メーカーが単に実際の流通価格や販売先などを調査することは,独占禁止法違反となることはありません。
ただし,メーカーが流通業者に対し,自社の示した価格で販売させようとしてこうした調査を行うときは,その調査は,流通業者に対し,より確実に,メーカーの示した価格で販売するようにさせるための手段として機能すると考えられます。このため,そのような,メーカーが流通業者に対し,自社の示した価格で販売させようとする行為は,再販売価格維持行為として独占禁止法違反となります(流通取引慣行ガイドライン第2部第一の2参照)。

事業者に明確な判断基準を示すという観点から、「流通調査が独禁法違反ではないこと」はQ&Aではなく、新ガイドラインに明記することが重要である。そのうえで、流通取引慣行ガイドライン第2部第一の2に記載のある「自社の示した価格で販売させようとして行う流通調査」という要件は、極めて主観的なものであり、事業者の予見可能性を高めるという観点から不適切であると考えるため、新ガイドラインでは、まず、流通調査自体をもって独禁法違反に問われることはないことを明確にしたうえで、具体的な価格維持行為を示して、当該行為が独占禁止法違反となる旨を明記すべきである。


論点2.「価格が維持されるおそれ」の明確化


現行ガイドラインは、「価格が維持されるおそれ」がある場合に不公正な取引方法に該当し得る行為として、次の5つの行為を挙げている。


(1) 市場における有力なメーカーが行う厳格な地域制限
(2) 地域外顧客への販売制限
(3) 帳合取引(卸売業者に特定の小売業者とのみ取引させること)の義務付け
(4) 仲間取引(横流し)の禁止
(5) 販売方法を制限(説明販売・商品宅配・品質管理条件・売り場等の指示)を手段として、販売地域や取引先等の制限を行うこと


また、常に価格が維持されるおそれがあり、行為そのものが違法となる行為として、次の2つの行為を挙げている。


(1) 安売り業者への販売禁止(従来の取引先が安売りをしたため出荷停止する場合を含む)
(2) 店頭、チラシ等の表示価格の制限


垂直的制限行為に関して、ブランド内競争は同一商品間の競争であり価格が最大の競争要因となるため、非価格制限行為であっても必ず価格への影響が生じ得る。一方、垂直的制限により競争力の強化が期待される価格以外の競争要因(品質、サービス、商品ラインナップ等)も考慮することが非常に重要である。言い換えれば、垂直的制限によってブランド内では競争制限効果が生じる一方、当該ブランドの競争力が強化されることで、ブランド間においては、競争促進的な効果が生じ得るということである。したがって、垂直的制限行為には、競争制限的な効果のみならず、競争促進的な効果がある旨を新ガイドラインに明記すべきである。そのうえで、非価格制限行為については、ブランド間競争が行われていることが前提として、具体的な価格維持行為を伴わなければ、結果として価格が安定する効果があったとしても、独占禁止法上問題とならないと整理すべきである。


 また、安売り業者への販売禁止に関しては、昨今の小売事業者の実態等を踏まえ、安売り業者への販売禁止に該当する場合であっても、品質問題の回避のためや後述する選択的流通の要件を満たさない等、他の理由がある場合には、独占禁止法違反とならないことが明記されるべきである。


論点3.選択的流通の判断基準の明確化


 

現行のガイドラインでは選択的流通の記載はなく、販売方法に関する制限が合法と判断される場合の記載があるのみである。また、販売方法の制限が合法とされるためには、


(1) 商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売のための合理的な理由が認められること
(2) 他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられていること


を同時に満たす必要があり、(1)と(2)を満たす場合であっても価格が維持されるおそれがある場合には、独占禁止法上問題になり得るとされており、実際に販売方法が制限できるのは化粧品の対面販売など極めて限られたケースのみと解釈されているのが実態である。


このため、「選択的流通」について、規制改革会議答申内容を踏まえ、「売手が一定の基準に基づき選択した流通業者にのみ、直接又は間接的に商品販売し、選択された流通業者は、売手が決めた販売手法等を順守すると共に、認定されていない流通業者に当該商品を提供しない義務を負う制度」などと新ガイドラインに具体的に定義づけるべきである。そのうえで、一定の基準を設けるに当たっての合理的な理由として、商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持以外に、顧客満足度の向上、商品イメージの確保、インストラクションの必要性等の具体的事項を追加すべきである。加えて、選択的流通を適用する商品に関しては、価格制限行為が伴わない限り、いかなる非価格制限行為も独占禁止法上問題とならないことを明記すべきである。


論点4.再販売価格維持の正当化事由の明確化


現行ガイドラインでは、再販売価格維持は、原則違法との位置づけとなっており、事実上、行為規制として扱われている。独占禁止法上問題とならない例外が記載されているものの、次の(1)、(2)のとおり、「実質的にメーカーが販売している場合」のみを想定した内容となっている。


(1) 委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合
(2)メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対し、その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受けとることとなっている場合など、実質的にみてメーカーが販売していると認められる場合


上記の「実質的にメーカーが販売している場合」は、実効性のある例外規定になっているとは言い難いため、新ガイドラインでは、メーカーが直接販売していない場合の正当化事由についても具体的に明記すべきである。例えば、複数メーカーの同種の商品が市場に供給されている場合、市場に画期的な新製品を導入するに当たっては、市場で価格の参考となる指標がないため、発売後一定期間における再販売価格維持は適法であることを明記することなどが考えられる。これにより、消費者の価格への信頼感の形成に寄与することが考えられ、販売価格が安定することにより、流通業者やメーカーが新たな商品価値を提供しやすくなり、消費者への対応、製品の改善や新たな新製品開発への投資が可能になることから、ブランド間競争の促進に資することが期待される。


論点5.セーフハーバー基準の見直し


現行ガイドラインにおいて、一定の基準を満たせば規制の対象外となる範囲(いわゆるセーフハーバー)が設定されているのは、競争品の取扱い制限と厳格な地域制限の2つの行為類型のみである。また、セーフハーバーの要件もシェア10%未満かつ市場での順位が4位以下と極めて狭い条件と言わざるを得ない。このため、セーフハーバーが認められる行為を非価格制限行為全般に拡大すると共に、セーフハーバーの要件も以下の他ガイドライン等を参考するなどして、大幅に緩和すべきである。




3.ガイドライン改正によって可能になること

繰り返しになるが、ガイドライン改正の狙いは、「顧客満足の更なる向上」と「消費者・流通・メーカーのwin-win-win」にある。その具体的な効果として、次の3点が挙げられる。


(1) 流通調査実施の合法性が明確になることにより、メーカーは流通調査により、製品安全に関する情報やアフターサービス情報等をタイムリーかつ的確に提供することができ、製品事故発生を未然に防ぐ対策や事故発生時の迅速対応が可能になり、お客様も迅速に事故防止策等を享受することができる。
(2) 選択的流通制度の合法性が明確になることにより、メーカーは詳細な商品説明を義務付ける等の販売方法を導入することができ、店頭説明や広告・宣伝により適切な商品選択の機会を提供でき、これにより、商品選択に資する情報をお客様が適時・適切に入手できるようになる。
(3) 選択的流通制度の合法性が明確になることにより、認定取引店以外の商品知識やサービス体制の不十分な販売業者への商品供給を回避することが可能になり、お客様との商品購入トラブルを未然に防止することができ、リコール対応も容易になる。


流通調査、ブランド戦略に応じた流通チャネルの選択、消費者の満足度を高める販売手法の適用等が可能になることで、お客様に価値ある商品・サービスを提供できるようになり、消費者利益に資するイノベーションが実現する。ガイドライン改正により、流通事業者とメーカーは、消費者が求める価格メリット以外の多様なニーズに応えられるマーケティング施策を強力に推進することができるようになるのである。


4.おわりに

以上のように、新ガイドラインは流通事業者とメーカーの競争力強化を通じ、消費者が価値ある多様な商品を入手できるメリットをもたらすことが最大のポイントとなる。つまり、メーカー間での競争が活発に行われていることを前提としたうえで、垂直的制限行為によって競争力の強化が期待される価格以外の競争要因(品質、サービス、商品ラインナップ等)を重視することが、消費者メリットを最大限に高める上で非常に重要ということである。垂直的制限行為は競争制限効果のみならず、競争促進効果ももたらし得るという大前提を正しく認識したうえで、これまでに述べた改正の論点とその方向性に沿った内容となることを要望する。加えて、納得性を高める観点からさまざまな意見を取り入れるため、透明性のあるプロセスを経て改正作業が進められることを切に希望する。


以上

getacro

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